「一度始めたらやめられない」が変わる?
高齢化が進む中、認知症や障害によって判断能力が低下した方を支える「成年後見制度」。
しかし実際には、「使いづらい」「自由が奪われる感じがする」「一度始めるとやめられない」「必要以上に後見人の権限が強い」といった声も多く、利用をためらう人も少なくありませんでした。
そんな中、2026年、成年後見制度が大きく見直される予定です。
今回は、現在の制度の基本と、今後どう変わるのかを見ていきます。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などにより、契約や財産管理の判断が難しくなった方を支援する制度です。
たとえば、
・施設入所契約
・不動産売却
・預貯金管理
・相続手続き
・悪質商法への対策
などを、本人に代わって行います。
本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、市長などが家庭裁判所へ申し立てをし、審判が下りたら開始されます。
後見人となる人は、原則は裁判所が決めます。
原稿制度の大きな問題点
現在の制度で特に問題視されているのはが「終身制」です。
一度後見開始になると、原則として本人が亡くなるまで終了できません。
例えば、「遺産分割のためだけに利用したかった」というケースでも、その後もずっと後見人による財産管理が続きます。
また、
・家族が自由に預金を動かせない
・自宅売却やアパートの賃貸契約の解約に家庭裁判所の許可が必要
・後見人への報酬が継続的に発生する
など、「必要以上の制限」を感じる人もいるようでした。
実際、制度の利用率が伸び悩んでいる背景には、この”使いにくさ”があると指摘されています。
2026年改正で何が変わる?
2026年、改正案が閣議決定されました。それによると成年後見制度がかなり柔軟になるようです。
① 「必要なときだけ利用」が可能に
最大の変更点はここです。
これまでのような「一度始めたら原則終了できない制度」から、「必要なときだけ利用する制度」へ変わる方向です。
例えば、
・遺産分割が終わるまで
・不動産売却が終わるまで
・一時的な支援が必要な時期だけ
といった利用が可能になる見込みです。
② 「後見・保佐・補助」の3類型が見直される
現在は
後見:判断能力を欠く常況
保佐:判断能力が著しく不十分
補助:判断能力が不十分
とされていますが、改正では「補助」に一本化する方向で検討されています。
それはつまり、「本人に必要な支援だけに代理権を付与する」ということです。
③ 本人の意思尊重がより重視される
近年は「財産管理」「身上監護」だけでなく、「本人の自己決定をどう支えるか」が重視されつつあります。
そのため改正後は
・本人の意向確認
・支援内容の限定
・必要最小限の代理権付与
などが重視されると考えられます。
④ 後見人の交代がしやすくなる可能性
現行制度では、一度選任された後見人を変更するのは容易ではありません。
しかし改正では、
・状況変化
・相性
・支援内容の変更
などに応じて、柔軟な交代が認められる方向なようです。
また、申立ができる人にも「本人が公正証書により指定した人」が加わるようです。
つまり、配偶者ではない”内縁の妻”や”信頼できる友人”などを、申立人として指定しておけるということです。
※後見人の指定ではないことに注意
行政書士として感じる「これからの後見」
成年後見制度は、これまで本人の財産を守るための「財産管理中心」の制度として運用されてきました。
しかしこれからは、「本人らしく生活するための支援」へ変わっていく流れを感じます。
単なる手続き面だけでなく、「家族関係」「介護」「医療」「福祉」「相続」「住まい」などを含めた総合的な支援が、ますます求められるようになるでしょう。
まとめ
2026年の成年後見制度改正では
・終身制の見直し
・必要な期間だけの利用
・本人の意思の尊重
・柔軟な支援内容
などの、大きな転換が予定されています。
これまで「使いづらそう」「自由を奪われそう」と感じていた方にとっては、制度利用へのハードルが下がる可能性があります。
一方で、制度が柔軟になるほど「本人にとって本当に必要な支援は何か」を丁寧に考えることが求められるようになり、専門家の役割がより重要になるでしょう。
成年後見制度は「財産を守る」制度だけではありません。
これからは、”最後までその人らしい生活を支える制度”へ変わっていくのではないでしょうか。
