遺言書を書く前に知っておきたい5つのポイント

目次

1.なぜ遺言書が必要?

そもそもなぜ遺言書を書いた方がいいのでしょうか。

遺言書が無い場合は、相続人全員で協議して遺産分割協議書を作成します。

何も揉めることなく話合いで遺産を分けることができれば、遺言書がなくても問題はないでしょう。

ですが、どんなに仲がいい家族でも、それぞれの言い分が異なり分割協議がまとまらないことはよくあります。

遺産分割そのものには期限はありませんが、相続税の申告が必要になる場合は10か月以内に申告しなくてはなりません。

相続税が発生しない場合でも、不動産の相続登記を3年以内にしなければ10万円以下の過料が科せれらることになります。

よって、遺産分割協議は早めに行うべきですが、遺言書があれば遺産分割協議をすることなく相続手続きを進めることができるのです。

ここでもう一つ大きなメリットになるのは、遺産分割協議をしないということは、印鑑証明がいらないということです。例えば子供が海外にいるといった場合、遺産分割協議のために帰国してもらわなくてはなりませんが、遺言書があれば帰国する必要がないのです。

一方、相続人が子一人だけで全ての財産を相続させる場合は、遺産分割協議をする必要がないので、遺言書は必要ないと考えてよいでしょう。

2.遺言書を作成するタイミング

遺言書を書くタイミングは非常に難しいと思います。

早ければいいというものでもなく、また遅すぎると認知症を発症してしまう可能性もあります。

早すぎる場合は、まだ子供がまだ独身で今後結婚するかしないか分からない、就職して間もないため転勤の可能性もある、など今後の家族の見通しがつきません。あらゆる可能性を考え、予備的遺言をたくさんつけておかないといけなくなります。

ご自身も、その後の健康状態を予測することは非常に難しいでしょう。

相続が発生したときが遺言書を書いてから20年以上もたっていたら、実情が合わないこともあります。

何度でも書き換えることができるとは言え、実際はそう何度も書き換えることはしないものです。

しかしながら、70歳をすぎると認知症をはじめ様々な病気になるリスクが高くなります。

遺言書を書くには、意思能力がなければなりませんし、心疾患や脳血管疾患などは突然訪れることもあります。

ご自身の健康状態や病気のリスク、家族の今後の見通しなどを考える必要があるでしょう。

3.相続分指定と一部遺言

1.相続分の指定

民法では法定相続分(相続する割合)が決められています。配偶者が1/2、長男が1/4、長女が1/4、です。

ですが、それは絶対ではなく、遺言書で相続分を指定することができます。

例えば配偶者に2/3、長男1/6、長女1/6といった感じです。

その場合、プラスの財債だけではなくマイナスの財産、つまり借金などもその割合で相続されるので注意が必要です。

また、相続財産は原則その割合での共有になりますので、個別にそれぞれに帰属するわけではありません。

したがって、個別にどの財産をだれに相続させるかを遺産分割協議で決める必要があります。

2.一部遺言

「自宅の土地と建物は長男へ相続させる。」

のように、特定の財産のみを対象とした遺言書を一部遺言といいます。

この場合も、残りの財産は遺産分割協議をする必要があります。

また、長男が相続した財産が他の相続人の遺留分を侵害していた場合は、遺留分侵害額を請求される可能性があります。その場合は、長男は金銭で支払わなくてはなりません。

支払う資金を捻出するために、相続した自宅を売却することに・・・なんてことにもなりかねません。

一部遺言をする場合は、遺留分に十分注意する必要があります。

遺言書を書く大きなメリットは、遺産分割協議を行う必要がなくスムーズに相続手続きを開始する

ことにあるので、結局遺産分割を行うことになる相続分指定や一部遺言は、お勧めしません。

せっかく手間暇をかけて、遺された家族の負担を減らすために遺言書を書くのですから、是非全部遺言を書きましょう。

4.注意すること

ずっと一緒に暮らしていた家と土地は妻へ、老後に色々世話になった長女には預金を、後継ぎの長男は事業承継・・・

様々な想いや事情があると思います。

1.不動産は共有にはしない

売りたい、貸したいなどのときに共有者の同意が必要など、後々に面倒なことになるケースが多いからです。

2.遺留分について

遺留分は法定相続分の1/2になります。

遺留分を侵害した遺言書も無効にはなりませんが、遺留分侵害額を請求されたら、金銭で支払う必要があります。

争いにならないようにするためにも、遺留分を侵害するような遺言書は避けるようにしましょう。

3.予備的遺言を入れる

人生何があるか分かりません。必ず年齢順に亡くなるとは限らないものです。

「◯◯は長男へ相続させる」と書いてあっても、遺言者より先に長男が亡くなっていた場合は、遺産分割協議が必要になってしまいます。

「長男がいなかったら△△へ」と書いておくと安心です。これを予備的遺言といいます。

4.遺言執行者について

「遺言執行者」とは、遺言書に書いてある内容を実現し、必要な手続きを行う人のことです。

必ず決めておかないといけないわけではありません。遺言書に遺言執行者が書いてない場合は、相続人で相続手続きを行います。

あるいは家庭裁判所に遺言執行者の指定を申し立てることができます。

ですが、財産に不動産や株が多くあるなど、手続きが複雑になるときは、専門家にあらかじめ相談し、遺言執行者に指定しておくと安心です。

5.再婚の場合

例えば遺言者が夫で妻が再婚の場合。親がすでに他界していて子供がいなければ夫の相続人は妻のみです。

夫の遺産は全て妻に行きます。

その後妻が死亡したときの相続人は、前婚者との間に子供がいれば前婚者の子になります。

妻が相続した遺産は、前婚者との間の子に相続されます。

これは果たして遺言者(夫)の望む形なのでしょうか。

その場合は妻にも「財産は夫の兄弟へ」などの遺言書を書いてもらうこともできますが、遺言書は何度でも書き換えることができるので、後々の保証はありません。

このケースでは、先々まで財産の行方を指定できる民事信託契約をお勧めします。

5.遺贈寄付について

おひとり様にお勧めなのが「遺贈寄付」です。

使いきれずに残った財産全てでもいいですが、少額(例えば10万円のみ)でも可能です。

自分が好きな事、興味がある世界などに財産を遺贈するという遺言書です。

例えば、犬や猫が好きな方が「10万円のみ動物愛護センターへ遺贈する」などです。

自分が亡くなったあとにも尚、社会貢献できるというのは、生きる上でのモチベーションにもなると思いますので、検討してみてはいかがでしょう。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。

遺言書を書くといっても、いざとなったら考えなくてはならないことがたくさんありますね。

せっかく家族のために、と思って書いた遺言書が無効になってしまったり、結局遺産分割協議が必要になって争いになってしまったり・・・

そんなことにならないためにも、遺言書を書こうと思い立ったら、是非行政書士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

この記事を書いた人

愛知県の行政書士です。
50代から資格取得、登録、開業しました。
主な取扱業務:酒類販売業許可申請、医療機関行政手続き、遺言書・相続、ペットのための信託、後見等。
お気軽にご相談ください。

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